経理担当が知っておきたい消費税の納付額の計算方法と課税形式

企業は国に対し消費税を支払う必要がありますが、納付額の計算方法はご存知ですか?
経理担当であれば計算方法を知っていないと正しい納付額が求められませんので、 消費税の納付額を計算する方法と、課税形式についてはちゃんと理解しておきましょう。
ここでは消費税の納付金額計算方法や課税形式について詳しく解説します。

課税形式について

消費税を正しく計算するためにも、まずは課税形式について把握しておきましょう。
消費税は、一般課税と簡易課税という2つの形式があり、それぞれで計算も異なっています。

まず一般課税とは、本来の消費税の計算方法で用いられる形式で、基本的にはこの「一般課税」を利用します。 ですが、計算が面倒で事務処理に負担がかかるなどの理由から、計算を簡単にするために「簡易課税」という形式もあります。簡易課税を利用するためには、消費税簡易課税制度選択届出書という書類をあらかじめ提出しなければいけません。

また課税期間の前々事業年度、もしくは前々年の課税売上高が5,000万円以下でないといけません。 つまり一定の条件を満たしていれば簡易課税を利用できる形です。

消費税簡易課税制度選択届出書を提出していなかったり、課税期間の前々事業年度、もしくは前々年の課税売上高が5,000万円以下でない場合は一般課税で計算を行います。

消費税簡易課税制度選択届出書の提出期限

簡易課税を利用するためには消費税簡易課税制度選択届出書を提出する必要がありますが、提出期限が決まっています。原則として簡易課税を適用したい課税期間の開始の日の前日までです。

これを過ぎてしまうと簡易課税も適用されないので注意しましょう。
必ず期限までに書類を作成し所轄の税務署に提出します。

一般課税で納付額を計算する場合、課税売上にかかる消費税額から課税仕入等にかかる消費税を引きます。式で表した場合、納付額=課税売上にかかる消費税額-課税仕入等にかかる消費税となります。

消費税が10%になったと同時に、軽減税率制度も適用されましたので、10%か8%なのかを間違えないようにしましょう。
計算式自体はそれほど複雑ではありませんので、計算方法さえ把握しておけばすぐに納付額を求めることが可能です。

簡易課税における納付額の計算方法

簡易課税で計算する際には、課税売上にかかる消費税額から課税仕入等にかかる消費税を引くという基本的な計算方法は変わりません。ただしみなし仕入率という新しい考え方が出てきます。

本来、課税仕入等にかかる消費税は課税期間の課税仕入高に10%、もしくは8%を掛けて計算しますが、簡易課税の場合は、課税売上にかかる消費税にみなし仕入率を掛けて計算できます。

これによって計算が少し簡便になり、より納付額を計算しやすくなるわけです。

みなし仕入率は事業区分で変わる

簡易課税による計算ではみなし仕入率の数字が重要になりますが、具体的な数字は事業区分によって違います。例えば、卸売業に代表されるような第一種事業はみなし仕入率は90%です。

つまり課税売上にかかる消費税に90%を掛ければ、課税仕入等にかかる消費税を求められます。
第二種事業は80%、第三種事業なら70%で、第四種事業は60%、第五種事業は50%、そして第六種事業は40%と続きます。

事業区分によってみなし仕入率の数字が変わるので、この点には十分注意しましょう。
事業区分を勘違いしていたり、みなし仕入率を間違ってしまうと消費税の納付額も正しく計算できません。

税制改正によるみなし仕入率の変化

2019年10月から消費税が10%に上がり、同時に軽減税率も適用となりました。これによってみなし仕入率にも一部変化が出ていますので注意しましょう。

第三種事業に分類される農業や林業、漁業のうち、軽減税率が適用される分はみなし仕入率が70%ではなく80%になりました。

つまり軽減税率が適用される部分に関してはみなし仕入率が10%上がっているわけです。そのため第三種事業の場合、みなし仕入率が70%のままなのか、80%に上がったのかを判断しなければいけません。

非常にややこしいですが、みなし仕入率が変わることで消費税の納付額も変わってくるので正しく計算しましょう。

まとめ

消費税の納付額を計算する場合は、課税形式によって計算方法が変わります。
基本的には一般課税形式で計算を行いますが、書類を提出するなど条件を満たせば簡易課税形式での計算が可能になります。

また、簡易課税形式を利用する場合、事業区分によってみなし仕入率が変わることも重要なポイントです。事業区分ごとにみなし仕入率の数字が変わり、消費税の納付額も違ってきます。

一般課税形式を利用するなら特に気にする必要はありませんが、簡易課税形式の場合はみなし仕入率についても正しく理解しましょう。
こうした点を抑えておけば、消費税の納付額の計算もスムーズに行えます。